新しい注射の治療①

〜ハイドロリリース・筋膜リリース・末梢神経リリース〜

⑴ 痛みの原因は結合組織(ファシア)に存在

 最近の研究で、トリガーポイントと呼ばれる痛みの部位は、Fascia=ファシアと呼ばれる部位、すなわち筋肉や筋膜、腱や靭帯、脂肪組織といったいろいろな結合組織に存在することがわかってきています。
 このファシアは、様々な組織のスキマに存在し、お互いに連結してからだの動きを制限したり協調したりしています(ファシアの連動)。
 長年の姿勢の悪さや、怪我などによって、ファシアが硬くなったり、隣の組織と癒着して動きを制限し、痛み物質が貯留したり、神経そのものを圧迫絞扼することで、肩こり、腰痛、五十肩や神経痛などがおこると言われています。硬くなったり、くっついたファシアの部位がわかり、その部位に治療ができれば、痛みを改善できるのです。

⑵ エコー なら、痛みの原因部位を正確に特定、即治療

 痛みの部位やその関連部位にエコーをあてると、白く重積した異常ファシアがみられ、その部位の伸張性や滑走性がおち、周囲の組織とくっついて、痛み物質が溜まっています。
 エコーガイド下ハイドロリリースは、エコーで白く重積したファシアを確認して、薬液を注射することで、くっついた組織をはがし、また痛み物質を押し流すことができます。エコーで、注射後に筋膜の滑走の改善を確認したり、周囲の血管の拍動の増大をみとめ、効果を確認します。そして何より、疼痛が一気に改善します。
 薬液は生理食塩水(塩水)か乳酸リンゲル液ですので、妊婦さんでも子供さんでも、安心して使用することができます。
 これらの筋膜や重積した結合組織にする注射を ”ハイドロリリース注射” といい、今までのトリガーポイント注射にかわる新しい治療として注目されています。さらに最近は神経周囲に直接リリースを行う、”末梢神経リリース” や、可動域制限のある関節に打ち、可動域を改善を目的にする注射も行われています。

ファシアの重積(エコーとシェーマ図)

⑶ 末梢神経の圧迫も改善(末梢神経リリース)

 筋肉や腱の病気と考えらていたテニス肘や肩こりなども、筋肉が硬くなり、その間を通る神経が挟まって症状を出していることがわかっています。
 また脊椎疾患の場合も、障害神経の支配下の筋肉が硬くなり、筋肉の間を走る末梢神経を障害することがあります。この末梢神経の周囲にハイドロリリースを行う ”末梢神経リリース” を行うことで、症状を緩和させることできます。高精細エコーの導入によって、かなり細い末梢神経の部位まで特定してリリースできるようになりました。慢性的な神経痛で他の神経ブロックの効果がなかった場合、一つの選択肢と考えられます。
 * 原因を取り除くことはできませんが、経験上かなりの長期間、効果が続くこともあります。

⑷ メリット(利点)・デメリット(副作用)について

 エコーを用いるため、発痛源に正確にアプローチできます。また、安心安全な生理食塩水等を使うため、アレルギー反応や副作用がありません。また投与箇所、投与回数などの制限もとくにありません。

 デメリットとしては、注射であるため、痛みが伴い、出血、腫れを起こすことがあります。また感染のリスクはごく稀ながらゼロではありません。運動療法や姿勢の改善が見込めないと、短期的な効果しかないことがあります。

 保険診療で行う場合は、麻酔薬を使用しないといけないこと、1週間に1回しか打てないなどの制約があります。

⑸ ハイドロリリースの対象はどんな病気?

 結合組織(神経周囲の結合組織も含む)の痛みであれば、急性の痛み、慢性の痛みのどちらでも効果があります。

 具体的には、ぎっくり腰、寝違え、むちうち、慢性腰痛、肩こり、五十肩、アキレス腱炎、テニス肘、肉離れ、神経痛、腱鞘炎、手根管症候群、肘部管症候群、椎間板ヘルニアや頸椎症などの神経痛など、多岐に及びます。マッサージや電気治療、鍼灸で治らない、慢性的な痛みについても良い適応です。

 筋膜、神経のどちらにも同時にリリースを行うことも可能です。
 * 液体で剥がす、痛みを洗い流すので、高度な癒着や、外傷や手術後の瘢痕などははがれません。

 * 関節内の痛みは癒着ではなく、炎症や物理的な刺激であることがあるうえ、関節内は密閉空間のため、痛み物質を洗い流すことができませんので、適応外となります。もやもや血管や炎症に対する治療、ヒアルロン酸などを用いた治療が適応になります。

肩こり、腰こりからぎっくり腰が発生するメカニズム

筋肉のこりに対するハイドロリリースのイメージ図

 エコーを用いて、白く重積下部位に生理食塩水や乳酸リンゲル液を注入し、筋膜、結合組織の滑走性をあげるとともに、痛み物質を押し流し、症状の改善をはかります。

⑹ハイドロリリースの効果を保つために

ハイドロリリースの効果を保つためには、再癒着や筋肉、ファシアの状態を良好に保つことが大切です。そのために、注射で痛みが取れた(筋膜が剥がれて滑走性が出た)後に、毎日ストレッチをしたり、筋力強化や運動の習慣を身につけ、普段の猫背や丸くなった姿勢の改善に取り組むことが大切です。そうでなければ、ふたたび癒着や痛みの再発が起こります。(何度でも注射は可能ですが、なるべく注射の回数は少ない方がいいですよね。)

⑺ ハイドロリリースをご希望の患者さんへ

 ハイドロリリースはエコーを用いて行います。癒着場所が複数箇所に及ぶこともあり、注射の回数が複数箇所におよんだり、癒着部位、発痛部位の診察に時間がかかることがあります。混み具合によって当日施行できないこともありますので、ご了承くださいますよう、お願いいたします。

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